ノープレ論的コラムvol.3

筆者紹介
教育現場で3000名近い子供達と接してきた経験から、幼少期における「ランバイク」を子供達の成長にどのように活かしていくべきか?その1つの形として、不必要なプレッシャーを選手(子供達)に与えない「ノープレッシャー論」を発案。
ストライダーチーム 「TeamS」代表 兼 RCS専門「Team☆NP」なんでも係 日野元春氏
ノープレの奇跡② 【SOUSUKE選手の涙・本当の意味】
2015年ストライダーWorldCup
☆5歳そうすけ選手編☆
2015年1月1日TeamS発足。
最初からブレなかったことがあります。
「最後まであきらめないで全力で走る」「勝者を讃える」
ということです。
これは、自身苦い経験がありますし、逆の立場で失礼なことをしてしまった経験があります。
自分のような・・・
そんな選手にはなってほしくない。
なので、ずっと言い続けてきました。
一生懸命レースして・・・
勝った選手には素直に「おめでとう」と言おう。
全力で走りきって負けたんだから、しょうがない。きっと自分よりたくさん練習してきたんだね。がんばったんだよ。
今度は負けないくらい練習して、勝つことができれば素敵だね!いっしょにまたがんばろう。
レース度にずっと伝えてきました。
そして地方レース優勝、RCSA決勝進出などを経て
アメリカへ。
前日のプラクティスから、実はもっと前から予想していました。
決勝は絶対に波乱が起こると。
自身のSNSでも書きました。
理由はいくつもあるのですが、
グリッド幅、コース幅、第1コーナーに向かってのシェイプ、バックストレート一般道のスリッピ―さ・・など。
全開で気持ちが入っている選手が5~6人も団子になったら絶対に転倒あるなと予想していました。
前日エントリーがされていない・・
当日グリッドにゼッケン番号がない・・
いろいろとイレギュラーはありましたが、
何とか予選は1位通過、そのままファイナルA決勝へ。
そして決勝。
スタート前に自身から、JAPANメンバーのお父さん全員に握手しにいきました。
言葉は交わしませんでしたが、気持ちは全員同じだったと思います。
そしてスタート!!
ストレートで4名が関係する多重クラッシュが発生。
後続選手の体、ストライダーが頭部を直撃したのを目撃しました。
「まずい!」と思い、現場に駆け付けようと・・・・しませんでした。
スタートから、ずっと見守り続けました。
始めから決めていました。
何があっても・・・クラッシュ、転倒などがあっても絶対に助けに行かない。
彼自身で最後までやらせようと、決めていました。
助けにいけば、もう少し早くリスタートできて順位はもう少しよかったかもしれません。
でも行きませんでした。
彼は必ず最後まで走りきれると信じていたからです。
・・・リスタート後、全力で走っていました。
最後のストレートに来て、初めて声をかけました。
「最後まで全力で走れ!」
ここでまさかのハイプレです。ウソです。
悔いの無いように、油断させないようにあえてキツイ言葉をかけました。
自身も後悔しないように。
ゴール、そのまま表彰式です。
彼はずっと厳しい表情で立っていました。
泣きそうな表情なのか、真剣な表情なのか。ぐっと我慢しているのが伝わってきました。
とても男らしく、誇らしい姿でした。
「勝者を讃える」ことを彼なりにやっていました。
表彰式が終わって表彰台メンバーに「おめでとう!」を伝えて、その場所を離れました。
「よく頑張ったな!」
自身、涙腺がすでに限界で。号泣しながら彼に伝えました。
「ありがとう!」と
彼も今まで我慢していたのか、思いっきり泣いていました。
「ソウスケのおかげでアメリカこれた。
本当にありがとう。楽しかったか?」
「みんなで決勝出れて楽しかった。」
「そうか。体痛いところないか?」
「ない。(後で両膝、腹部のダメージを確認)」
「(まだ泣いている彼)なんで泣いてるん?」
「かいせい君がころんでかわいそうやった。」
「!!??」
5歳の彼が言った一言がすべてを物語りました。
5歳でも、いや、アスリートだからもうすでにすべてわかってるんです。
自分より前にいた、速かった選手が転倒したことに心を痛めていました。
自分のことではなく。
5歳です・・・よ。
親の想像を超えた成長を
知らない間にしていました。
とてもとても優しいそうすけ選手。
最後まで全力で走り抜けた彼を
本当に誇りに思います。
実は、世界戦でストライダーを引退する可能性がありました。
本人とよく話し合ってきたからです。
RCS浜名湖以降、引っ越しなどで環境がかわり様々なバランスが崩れていました。
宿舎への帰り道、勇気をもって聞きました。
「ストライダーどうする?」
「絶対にやる!!」
5歳クラス最年少での出場。
妹よりも少し小さいトロフィーでしたが私自身にはとても大きく、立派に見えました。
最高で最幸の世界戦でした。
ありがとうございました!
ランバイクを全てのスポーツの始まりに。